2008/12/11

古代の木の名前



時代によって違う木の名前表記











和 名古 代 (飛鳥・奈良・平安)中世(鎌倉・室町)
くり 栗 栗子
しひ 柞、椎子 櫪子椎 椎子
かし 橿 白檮 檮樫 橿 檮
かしは 槲 柏槲 柏
いちひ 赤檮 櫟 櫟子櫧 櫟
くぬぎ 櫪 挙樹皮 歴木 挙木 歴木欅 椚 釣樟
とち橡 杼 栩橡 杼 栩
つるばみ橡実
ははそ楢 柞
なら(のき) 柞 椎 楢
こなら  柞 鉤栗



「いちひ」はイチイガシ。「とち」は現在いうトチノキだけでなく、クヌギを指すことが多かったようです。
「つるばみ」はドングリ。
「ははそ」はコナラ、クヌギ、カシワなどのドングリを作る木の総称。





平安時代中頃、「櫟」はどちらもクヌギですが、このほか、もクヌギです。
このように同じ呼び名の木について違った漢字を使う例はいくつかあります。
また逆に同じ漢字が違った木を記すために使われることがあります。
これは本来中国の木を表すために使っていた漢字を日本の木に当てはめようとしたからです。

このように漢字の伝来が日本の木の名前を混乱させたといってよいでしょう。
この櫟は、現在ではクヌギのことを指しますが、昔は<いちひ>と読んで、常緑のカシ類であるイチイガシのことを指していました。
表にいくつかの木の名前の漢字表現が時代によってどのように違ってくるかを示しております。

楓は室町時代の辞書である「節用集」には<かへで>または<もみぢ>ち記載されているので、その頃にはカエデを表す言葉として定着していたようです。
なお、江戸時代の本草書によると椿や楓が中国のものと違っており、誤った漢字の使い方であることを指摘しますが、
同じ漢字を使っていても日本語と中国語とは違う言葉であると考えれば、納得いくでしょう。

雅びの木・古典に探る(海青社)
佐道 健