2009/01/04

数奇屋にみる木の特性



「木は生涯に二度大仕事をする」



木という素材は、その生涯に二度大きな仕事をしてまた自然に還って行く。
一度目は山で立っている時で、二度目は切られて人間に役立っている時である。

立木は、最適な環境づくりと健康増進の源の仕事をしている。
木がその生涯に行う二度目の大仕事は、さまざまな形で人間生活を支え、潤いと安らぎを与えてくれることにあるが、その際に木材故に持つ特性、木材でなければ有しない特性というものがある。







木材の吟味。
わずか2千円の差で....





「木材は、温度と湿度の調整機能を持っている」

家材としての木材は、切られても生きて、呼吸しており、室内の温湿度を一定の水準に保とうとする働きを持っている。
木の柱に触れると夏はやや冷たく、冬は暖かみがあっていつも心地よさを感じさせてくれ、触れていても皮膚温度の低下が最も少ない材料である。

特に湿度調整能力は高く、高湿度になると水分を吸収し、一定の水準を維持する働きがある。
実験でもビニール内装の室内は、百葉箱の中と同じく一日周期で室内湿度激しく変化するが、合板内装の室内は湿度50%前後を維持する結果が出ている。

正倉院の宝物が、非常に良好な状態で長年保存されてきたのも、厚さ2cmのスギ箱のお陰で湿度が一定に保たれていたことが知らされている。

実験の結果、内装材料で調湿性能の高いものは、インシュレーションボード、シージングボード、パーティクルボード、珪カル板、合板、ツキ板化粧合板、カツラ材となっている。
床も、木材を使うことで表面湿度が平均化して、ダニ、カビ、細菌類の発生を抑える機能を果たしている。
さらに木材はその多孔質さから結露を防ぐ力も併せ持つ。




「木材は優れた断熱性を持っている」

普通の断熱材は強度がないため、他の材料と組み合わせないと役割を果たさないが、木材は強度があり、断熱材とほぼ同等の断熱性を有している。
これは木材がパイプ状の細胞の集合体で、中に熱を伝えにくい空気を保持しているからで、例えばスギ材に比べるとコンクリートは20倍、鉄に至っては480数倍の熱伝導率となる。(※11月24日「木の断面図・拡大図」参照)

鉄筋コンクリートの建物は、熱伝導率が高いので、日が昇るとすぐに熱くなる上に、保温率も高いため、明け方まで冷めないことになり、冷房を必然にするし、冷気もすぐ室内に持ち込み、暖房を必要にさせる。

皮膚の表面温度は環境によって変化するが、床材料による足の温度低下は、コンクリートやビニールタイルが強く、木床が一番軽微であるとデーターに示されている。



「木材は適度な弾力性で衝撃を緩和する」

木材は衝撃を受けると「局部変形」と「わわみ変形」が起き、これで衝撃を緩和してくれる。(※12月7日ビデオ参照)

たわいやへこみは、厚さ、材主により多少の違いはあるが、建築資材としての機能を失わない適度なたわみとへこみで、衝撃を吸収する働きがある。
また、人間は、見たり触ったりするだけでも物の硬さを感じることができるが、実験では木材は、硬い軟らかいの中間にあり、快、不快の実験でもやや快適な材料として評価され、感覚面でも人間の生理作用に合っていると見られている。

木材は、衝撃吸収に加え、耐摩擦性、強度、耐久性など、各種機能を適当にバランス好く備えた材料で、住宅のマルチ機能材料ともいえる。


参考資料
(財)日本木材総合情報センター
「木がつくる住環境」