2008/12/13

漢字で表す木の名前の「?」



        平安時代にの中頃に編纂された「和名抄」の記載例


木の名前を表す漢字のことですが、日本で木の名前を漢字で書くようになったのは飛鳥時代からでしょう。
その時代には各地で方言(呼び名の違い)はあったにせよ、当時の日本語(和名)を呼んでいたことはいうまでもありません。
文字がなかった時代ですから木の名前は口伝えで伝わったはずです。
ところが、漢字が伝来した後は呼び方はそのままでも、文書に記すときには漢字を使います。
ここでいくつかの混乱が生じました。
日本を漢字で表す場合には、
①万葉仮名のように漢字の読み(音)で表す場合と、
②漢字の意味で表す二つの方法を使います。
ここで、①で表す時には和名はそのまま伝わりますが、
②の場合には書き方(漢字)だけが伝わり、読み方(和名)は伝わりません。

では、和名を感じに当てる場合にどのような方法を取ったでしょうか。
梅や茶のように樹木と名前が一緒に渡来したものは別として、感じとともに実物または植物の標本が伝わったわけではありません。
おそらく木の名前は書物の記載や個人の知識として伝わったに違いありません。

中国にある木と同じものが日本にある場合にはそれほど問題がないのですが、もし同じものが無い場合には、性質が似たもの、または書物の記載にあるものに
その漢字を当てたことと思います。
したがって中国と日本では全く違う種類の木を同じ漢字で表すことは十分にあり得ることです。
古代の木の名前を表す漢字を知るには「和名妙」のような古代の辞書を見ることです。


スギやヒノキは日本固有の木ですから、中国にはこれに当てはまる字はなかったはずです。
そこで「爾雅」のような古代中国の辞書の中で、日本のスギやヒノキに最も近い記述がある字(漢字)を選んで木の名前に当てたのでしょう。




したがって漢語での杉や檜が日本のスギやヒノキではなくて不思議ではありません。


ヒノキ林


なお中国語では杉木は日本でコウヨウザン(広葉杉)と呼ぶ木、また中国の雲杉はトウヒ属の木、すなわちスプルースの一種です。
または檜はビャクシン(イブキ)のことを指します。
一方、中国では日本産の杉を柳杉、ヒノキを日本扁柏と書きます。

参考 佐道 健「疑問だらけの木の名前」