2008/12/12

「木の名前の問題」

現在の木の命名法では、樹木は植物学的に科・属・種の順で細かく分類されており、さらには変種、品種などに分ける時もあります。

それぞれには、国際的に共通した名前(学名)ラテン語がついており、同一種・同一名が原則です。

しかし、学術的に必要な時以外には、その土地で使っている標準的な名前で呼ぶのが普通ですが、それでも一部の地方だけで通用する方言や、商業的な通称で呼ばれることがあります。

もともと木の名前は古い昔に人々が木の種類を区別する必要性から付けたもので、初めから植物的に付けたものではありませんでした。 

そこで花、葉、樹形、材質、用途に似ている点があると、違った種類のものが似た名前、または同じ名前で呼ばれることがあっても不思議ではありません。 逆に同じ種類のものでも、樹木の形態や材質に違ったものがあれば、別の名で呼ぶこともあったはずです。



その代表的な例として、日本ではかなり以前から家具などに使われている「マカンバ」(「カバ」)やミズメのような材を桜材と呼ぶ習慣がありますが、マカンバやミズメはカバ科の仲間(シラカンバ属)で、ヤマザクラなどの本当のサクラの仲間(サクラ属)とは植物学的には違っています。

カバ類とサクラ類とでは花は全く違うので開花時季、立ち木の場合は区別がつきますが、「材の性質」や「樹皮」の使い方では似たところがあります。

とくにヤマザクラの樹皮は樺細工といい、細工物の表面を加飾するために使うことがありますから、カバとサクラは必ずしも植物名としてだけ使ってきたわけではないようです。



また、植物学的に同じ属でも、種によって材質がかなり違うケースもあります。
ヒノキとサワラは同じ属の木ですが、サワラにはヒノキの芳香がありません。

実用的には、植物学的にも近く、材質も似ているいくつかの種類の木(種)を含む樹種のグループを一つの名前で呼ぶケースがあります。

例えば、北米のホワイトオーク類、中・北部ヨーロッパ産のオーク、日本や中国東北部で産出ミズナラなどを含む)、ラワン(メランチ)類がその例です。 このほか、北米産の数種の材を含むサザンパインや、主としてツーバイフォー用の製材として輸入されているヘム・ファー(ベイツガとベイモミ)も数種の材を含んでいます。 またメイプル(カエデ属)、スプルース(トウヒ属)なども材質がよく似た数種の木を含んでいるといってもよいでしょう。



佐道 健「疑問だらけの木の名前」から抜粋


樺細工はカバにあらず。



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